新入社員がモチベーション低下を感じる理由
新卒で迎える初めての職場は新鮮でやる気に満ちあふれています。しかし、実際には数か月後に「自分には合わないかも…」と感じ始める新人が少なくありません。たとえば、以下のような悩みはよく耳にします。
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期待と現実のギャップ
大学生活などで抱いた理想像に比べて、実際の仕事が地味に感じられる。 -
成果が見えづらい
新入社員のうちは業務範囲が限られ、達成感や手応えを得にくい。 -
周囲への遠慮
上司や先輩に質問しづらく、一人で抱え込みがち。
こうした要因が重なると、最初は高かったモチベーションが急激にしぼんでしまいます。リクナビの「2024年 新入社員の就職意識調査」でも、約8割の新入社員が「入社前後で意欲に差を感じた」と回答しており、この現象は多くの方にとって他人事ではありません。
特に5月の連休明けには「五月病」と呼ばれる軽いうつ症状に陥る人もいるため、厚生労働省のガイドラインなどを参考に早めの対策を取ることが大切です。
小さな目標を設定して達成感を積み重ねる
「大きな理想」を「小さな行動」にブレイクダウン
「早く仕事を覚えたい」「プロジェクトを任されたい」と大きな理想を持つことは素晴らしいですが、漠然とした目標のままでは途中で挫折しやすくなります。そこでおすすめなのが、目標を小分けにする手法です。
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今日やるべきことを3つに絞る
仕事の優先順位を明確にし、「今日中に◯件のメール対応を完了する」「資料を◯ページまでは読み込む」など、具体的な行動レベルで目標を設定します。 -
終わったらチェックを入れる
達成できた項目はチェックリストで可視化し、達成感を意識的に味わうようにします。
マイナビが行ったビジネス新人アンケートでも、新入社員約1800名のうち「小さな成功体験を重ねることがモチベーションを上げるカギ」と回答した人は6割以上にのぼっています (出典: https://www.mynavi.jp)。
まずは手の届く範囲の小さな成功を積み重ねることで、自己効力感が高まり、やる気を失いにくい体質を育てることができます。
「ポモドーロ・テクニック」を試す
集中力を高める時間管理術の一つとして有名なのが、ポモドーロ・テクニックです。25分の作業と5分の休憩を1セットとし、これを繰り返す方法になります。
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25分間はスマホ通知をオフにし、目の前のタスクだけに集中する
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5分間は席を立ったりストレッチをしたりしてリフレッシュする
この繰り返しにより、漫然と作業するよりも短時間で深く集中でき、こまめに休むことで疲労も軽減できます。作業が「リズム化」するため、モチベーションの波に左右されにくくなるのがメリットです。
フィードバックを求め、承認を積極的に得る
承認欲求は強力なモチベーションの源
人は誰しも「自分の努力を認めてほしい」「結果を褒められたい」という承認欲求を持っています。実際、新卒社員が仕事にやりがいを感じる瞬間として「上司や同僚からのポジティブな反応」が常に上位に挙がります。とくに最初のうちは仕事で成果を出すよりも、小さな進捗を報告し合う環境を作る方が大切です。
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こまめに進捗を共有する
例:「◯◯の書類整理が完了しました」「昨日の課題を何とかクリアできました」など小さなことでも積極的に伝える。 -
先輩や上司にフィードバックをもらう
「もう少しこうした方がいいね」と言われる指摘も、成長につながる貴重な情報源です。
これらのやり取りを通して自分の頑張りを客観視でき、褒めてもらえると素直にうれしいものです。そのうれしさが「よし、次もがんばろう」というモチベーションに直結します。
オフタイムとリフレッシュを軽視しない
「もう少しだけ頑張る」は要注意
新卒社員の多くは、「周囲からの評価を下げたくない」「早く一人前になりたい」という焦りから、つい無理をしてしまいがちです。ところが、休みなく頑張り続けるとやがてストレスが蓄積し、五月病のような気分の落ち込みにつながることもあります。
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睡眠時間の確保
目標は1日7時間前後。寝不足が続くと思考力や集中力が急激に落ち込みます。 -
週末は仕事から一時的に離れる
趣味に没頭したり、家族や友人と過ごすなど、頭をオフにする時間を意識的に作ります。
リフレッシュした状態で仕事に向かうと、自然と前向きになれます。やる気が出ない状態でも、体と心をしっかり休めておくことで回復のスピードが違います。
運動や軽めのストレッチも効果的
デスクワークが多い場合には、こまめな運動で血行を良くし、脳をリフレッシュさせるのも大切です。ランニングやジム通いなど本格的なものでなくても、昼休みに少し散歩をしたり、腕や肩を回すストレッチをするだけでもスッキリします。
視点を変えて“成長のチャンス”に変える
失敗や指導をポジティブに捉える
仕事を始めたばかりの頃は、慣れないことだらけで失敗がつきものです。上司や先輩から厳しく指導されることもあるでしょう。そんなとき、下記のように捉えるとモチベーションが下がりにくくなります。
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「失敗は学びの源」
自分の弱点を見つけるチャンスと割り切る。 -
「叱られるのは期待してくれている証拠」
本当にどうでもいい部下には上司は時間を割かないものです。
2024年の調査でも「厳しくても筋の通ったアドバイスをしてくれる上司を好む」という新入社員が多数いることが報告されています。大変なことをポジティブに変換する思考のクセをつけると、乗り越える過程で自己成長を実感しやすくなります。
「ロールモデル」を見つける
社内で「この人の働き方・考え方は素敵だな」と思える先輩や上司を探してみてください。目標とする人が身近にいると、自分がこれから成長していくイメージを具現化しやすくなります。
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観察し、真似できる部分を取り入れる
報連相(ホウレンソウ)のタイミングや書類のまとめ方など、細かいところをこっそり学ぶ。 -
定期的に相談してアドバイスを受ける
相手も「後輩の役に立てるのは嬉しい」と感じ、フィードバックを惜しまずくれます。
ロールモデルの姿勢を自分なりに解釈しながら取り入れていくと、モチベーションが落ちにくい習慣が少しずつ身につきます。
習慣化して「やる気の波」を小さくする
人間のやる気はどうしても波があります。しかし、「やる気」よりも「仕組み」で自分を動かすようにすると、長期的に安定した成果を出しやすくなります。
1日のルーティンを決める
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出勤後最初の15分はスケジュール確認
その日の最優先タスクを3つだけピックアップする。 -
仕事後の10分は振り返り
「できたこと」「できなかったこと」をメモし、翌日何を改善するか考える。
こういったルーティンを決めてしまえば、感情に左右されずに自分を動かすことが可能です。忙しくても“オートモード”でスムーズに仕事に取りかかれます。
タスクと報酬のセットを作る
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目標を達成したら小さなご褒美を設ける
お気に入りのカフェで休憩する、好きな音楽を聞く時間を設けるなど。 -
メリハリを意識し、やる気の持続をサポート
ただ働き詰めになるよりも、達成したら休む・楽しむという「報酬」があるほうが頑張りやすいです。
習慣化によりモチベーションの上下動を緩やかにし、「なんとなくやる気が起きない…」という日にも一定のパフォーマンスを維持できるようになります。
まとめ
新卒社会人としてのスタートは不安と期待が入り混じった時期ですが、モチベーションが下がるのは決して珍しいことではありません。
仕事への期待と現実のギャップや成果の見えづらさなど、落ち込む原因はいくつもありますが、小さな成功体験の積み重ねや周囲からの承認、十分なリフレッシュ、そして失敗や指導を成長のチャンスと捉える思考転換ができれば、やる気は再び湧き上がってきます。さらに、ルーティン化した行動やタスク管理の工夫により、日々の仕事をスムーズに進められれば、モチベーションの波も穏やかになるでしょう。
焦らず一つひとつの経験を糧にして、ぜひ自分らしいセルフマネジメント術を身につけてください。若手のうちは失敗も含めた学びの数が多いほど、将来的な成長につながります。自分で考え、行動を積み重ねる過程こそがキャリアの土台になるのです。ぜひ試行錯誤を楽しみながら、自分のペースで成長を続けていきましょう。